バナナビックルに出会えない。そんなことを(おそらく)最初に話題を振ったであろう人に話すと「宅急便で送ろうか? 1ダースを会社に」とおっしゃた。
 それはまぁ、確かに飲みたいのはやまやまだが、不味い、不味いと言われているものを1ダース送ってもらっても、社内のオレ的立場が楽しい位置づけになってしまう。
 ……それはそれでおもしろいかも……
 とは思ったが、そこまでしていただくことはない。丁重にお断りをした。
 まぁ、いいさ。そんな不味いものなんて飲みたくないさ。この件はきっぱりすっぱり忘れよう。
 そう思った矢先のことだった。
「……あった」
 そう、ついにオレは遭遇したのである。伝説のバナナビックルに!
 その出会いは、まさに『迂闊』の一言だった。バナナビックルが売っていたのは会社近くのコンビニ。そう、セブ○イレブンの通りを挟んだ向かいのコンビニにあったのだ!
 迷うことなく、むしろ頭で考えるよりも前にオレはバナナビックルを手に掴んでいた。おそらく、そのままレジに向かえたかもしれない。
 しかし、すぐにレジには向かわなかった。と言うのも、不意に冷静になったからだ。
 皆が口を揃えて「不味い、不味い」というバナナビックル。果たしてそれだけで、オレは常夏の社内で渇きを癒せるのだろうか? そう考えたオレは、バナナビックルとともに無難な缶コーヒーを一緒に購入することにした。
 考えは正しかった。
 バナナビックル(&缶コーヒー)を購入したオレは会社に急ぎ、何はなくともキャップを開けて一口飲み込んだ。
 ……あぁ、やっぱ不味い。
 なんと言えばいいのだろう。とりあえず、のどごしは悪くない。が、それに伴い酸味がキツイ。で、最悪なのが後味だ。咽の奥にいつまでたっても消えない感触が残っている。それは煙草を吸っても消えないほどのしつこさだ。
 この味を一言で言い表すとしたら……『皮を剥いて一日経ったバナナの味』とオレ的に解釈した。試しに社内の人間数人に飲ませたところ、おおむね同じ様な意見だった。中には『見ただけで不味そう。いや不味い」と断言する輩もいた。
 確かに見た目も不味そうなんだけどねぇ……。まぁ、この味だったら美味いと言うヤツはいない……
「美味いじゃないっすか」
 ……はい?
「いや、これなかなかイケますよ。オレ的には全然OKですけど」
 ……本気か? 本気なのか!? ウケようと思ってそんなこと言って……って、一気に飲み干しやがった。
「以前、ビックルにブドウを混ぜたものに比べれば格段に美味いっすよ」
 と、そいつは言う。
 まぁ、うちの会社にゃ『食』に関してこだわりをもってるヤツが多いからなぁ……酢豚に桃入れるとか……。
 ともあれ、オレとバナナビックルの日々は終わりを告げた。少なくとも、ブドウ入りビックル(あるのかそんなもん?)と桃入り酢豚に手を出すことはやめておくことにしよう……。

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