我が兄

2001年6月12日
 思えば、6月9日は我が兄の誕生日だった。おめでとう。

 兄と言えば、様々な伝説の持ち主である。友達を後ろに乗せて田圃にダイビングして左手骨折、神経断絶しておきながら元に戻ってみたり、大学生のころは酔っぱらって風呂場で「あわわわ」言ってみたり、社会人になったらなったでMiniで東京〜仙台間を8時間あまりで往復してみたり……まぁ、語りだしたらきりがない。

 そんな波瀾万丈な人生を笑顔でねじ伏せながら生きてきた兄だが、極めつけはオレが生まれる前の話だろう。

 親から聞いた話を思い出してみると、オレがまだ、母親のおなかの中に入っていた頃の話だ。仙台は母親の出身地でもあり、その日、うちの両親と母方の両親(つまりオレの爺ちゃんと婆ちゃんだね)と蔵王のお釜に行ったそうだ。当時、兄貴が3つか4つの頃である。

 蔵王のお釜に行ったことがある人は知っていると思うが、あそこは常に風が強い。少なくとも、オレが行ったことがあるときは突風が吹き荒れている。その日もやはり、風が強かったそうだ。

 身重の母親はあまり兄の面倒を見ていられなかったらしく、その時は爺ちゃんに面倒を見てもらっていたそうな。そこまではまぁ、よくある家庭の団らん、観光気分真っ盛りだったのだろう。

ところが……

 ふいに立ちこめる霧。ごーごー吹き荒れる風。見る見る視界が奪われて行く。そんなとき、爺ちゃんが血相変えて戻ってきた。
「大変だーっ! まさかず(兄の名前)がいなくなったーっ!」
「なにーっ!!」
 そりゃもぉ、大騒ぎだったらしい。爺ちゃんはもとより、うちの両親も探したそうだ。ところが、あまりの濃霧で先が見えない。おまけに場所は蔵王のお釜、へたに歩くと転げ落ちる。
探すこと1時間。
「ああ、こりゃ死んだな」
 そりゃちょっと諦めるのが早すぎるんじゃないっすか? そんな気もしないでもないが、状況が状況だけに仕方ない。誰もが諦めたその時……。

 うちの兄は何事もなく戻ってきた。

 そんな兄も今年で29歳。本人曰く、「悪運だけで生きてきた」そうな。

 そんな兄に乾杯(完敗)。

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